内視鏡を使った検査や治療のご紹介
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内視鏡検査は人間ドックなどで実際に経験されたことがある方も多いかと思います。最近の内視鏡は細くなり、以前と比較してだいぶ苦痛は減りましたが、それでもなかなか苦しいものです。
動物における内視鏡検査は、全身麻酔が前提となるため、気軽に行える検査ではありませんが、人での検査と同様、食道、胃、小腸、大腸の観察や間違って飲み込んでしまった異物の摘出などを目的として行うことが多いです。
今回のコラムでは、当院で行っている内視鏡を使った検査や治療の一部をご紹介したいと思います。
○ 消化管の観察
なかなか改善しない吐き気や下痢の原因を究明するため、内視鏡検査が有用なことがあります。口から内視鏡を入れる上部消化管内視鏡検査と肛門から内視鏡を入れる下部消化管内視鏡検査があります。
以下の写真は胃の内部(噴門部:食道から胃の入り口)を内視鏡で観察したものです。消化管の表面や状態を観察します。内視鏡検査で異常が見つかった場合、その場所を採取し、組織検査を行うことで顕微鏡レベルでより詳しい状態を調べることができます。
○ 異物の除去
間違って飲み込んでしまった異物が胃内にある場合に、小さなものなら内視鏡で摘出することができます。動物は遊んでいるうちにコインや小石、梅干しの種などいろいろ飲み込んでしまうことがあります。
以下の例は、ストッキングの一部を飲み込んでしまった猫から摘出したものです。内視鏡で胃内のストッキングは摘出できましたが、腸内にもストッキングが詰まっていることが分かったので、開腹手術により摘出しました。内視鏡だけで摘出できない場合は、開腹手術が必要になります。
レントゲン検査(バリウム造影)
胃内のバリウムが胃から先に進みません。胃の動きが低下しており、またバリウムが染み込む何かが胃内に存在している可能性があります。
内視鏡検査(動画:下記の画像をクリックするとyoutube内で再生されます)
動画(4倍速:約1分)
胃内に布製の異物がありました。鉗子でつかみ摘出しましたが、まだ先にストッキングがある可能性がありましたので開腹手術を行い、腸切開にて異物を摘出しました。
開腹後行った腸の切開による摘出と実際に摘出された異物
ひも状の異物は腸閉塞を起こしやすいため、特に注意が必要です。
○ 胃ろうチューブの設置
胃ろうチューブは様々な病気(口の中の腫瘍など)が原因で口から食事のとれない場合や、食べ物を飲み込む際に誤って気管に入ってしまい肺炎を起こしてしまう場合などに行います。胃に直接チューブを取り付け、外部から栄養を採る方法です。内視鏡を利用することで、開腹手術なしで、安全に確実にチューブを取り付けることができます。
取り付けるイメージと実際に使用するPEGキット
イラストはhttp://www.peg.or.jp/eiyou/peg/about.htmlより引用しました(NPO法人PEGドクターズネットワーク)
○ 鼻腔の観察
内視鏡は鼻の奥の観察にも使用されます。なかなか改善しないくしゃみや鼻血などレントゲン検査と合わせて診断を行います。以下の例は、鼻の中に出来たポリープを口の奥から観察し、摘出したものです。ポリープの切除によりくしゃみや鼻汁が劇的に減少しました。
レントゲン検査
黄色の○で囲ったところが鼻腔です。真ん中を境に右側より左側のほうが白くなっているのがわかると思います。白い箇所が異常な場所です。
内視鏡で観察した鼻腔内の腫瘤と摘出された腫瘤
鼻の奥を内視鏡で観察すると大量の鼻汁と茎状の腫瘤がありました。
○ 最後に
なかなか改善しない下痢や吐き気など内視鏡検査をすることで原因がはっきりすることがあります。また、従来開腹手術によって摘出していた異物も、大きさによっては日帰りで退院できることから、体への負担も軽減されます。動物にもやさしい医療を提供してあげたいですね。