フェレットの尾にできる腫瘍(脊索腫)について
最近、犬や猫以外の動物を飼育している家庭も多いですね。ウサギやハムスターは以前から人気が高く診察する機会も多いですが、近年はフェレットを診察する機会がだいぶ増えてきたように感じます。今回は、フェレットの尾にできやすい腫瘍の一つ『脊索腫(せきさくしゅ)』についてまとめたいと思います。
【脊索腫とは】
脊索は、胎生期における体軸であり、発生に伴い脊椎へと分化していきます。出生後は、椎間板の髄核として痕跡を残します。脊索腫は、遺残した脊索から発生するまれな腫瘍です。ヒトでは極めてまれな腫瘍ですが、犬、ラット、ミンク、猫でも発生が知られており、特にフェレットでは比較的多く見られます*1*2。フェレットの脊索腫の多くは尾に出来ることが知られています。
フェレットの脊索腫は、フェレットの筋骨格系腫瘍の中で、最も多く報告があり、一般的に十分なマージンを取って切除することで、再発や転移はないとされており、予後は良好であることが多いです。
写真:当院で切除した脊索腫の病理組織写真
【治療】
切除が必要です。多くが尾の先端に発生するので、腫瘍の場所から数センチ上方までを外科的に切除します。
写真:切除した腫瘍
写真:切除した尾の断面
フェレットの手術も犬、猫同様に全身麻酔下で行います。全身麻酔をかけますので、術前検査として血液検査と胸部レントゲンを撮影し、異常がないことを確認します。
術前検査にて異常がなければ、静脈留置し点滴を行い、麻酔をかけていきます。
写真:犬や猫と同様に気管チューブの設置、心電図モニター、血中酸素濃度などの測定を行います。
フェレットの手術で難しいのは、術後の管理です。犬、猫同様エリザベスカラーを付けますが、体が長く、また柔軟なので、上記のようにかなりしっかりとエリザベスカラーを固定する必要がります。少しでもゆるいとするりと抜けてしまい、傷口をかみちぎってしまうので、抜糸が終わるまでは厳重な観察が必要になります。
写真:エリザベスカラーは、上半身まで固定する必要があります。
尾の先端に発生した脊索腫は切除により、一般的に予後はよく、再発・転移もないとされています。一方で、頭部や頸部、腰椎などの他の部位に発生することもあり、場所により治療が困難な場合もあります。
【参考文献】
1. Eun-Sang Cho et al., 2011. Chordoma in the Tail of a Ferret. Lab. Anim. Res. 27(1):53-7
2. Yui T. et al., 2015. Histochemical and immunohistochemical characterization of chordoma in ferrets. J. Vet. Med. Sci. 77(4):467-73.