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10歳のラブラドール・レトリバーが、元気消失と食欲不振を主訴にセカンドオピニオンで横浜旭どうぶつ医療センターを受診しました。
かかりつけ病院にて血液検査が実施されており、白血球数(WBC)の増加および炎症マーカー(CRP)の上昇が確認されていました。感染症や炎症性疾患を疑った治療が行われていましたが、症状の改善がみられず、さらなる精査を希望されて来院されました。
前医で実施された検査結果を確認したところ、明らかな炎症反応の上昇が認められていました。しかし、血液検査のみでは炎症の原因を特定することは困難でした。
そこで腹部超音波(エコー)検査を提案し実施したところ、腹腔内に複数の腫瘤性病変を確認しました。
腫瘤の性状を評価するため、超音波ガイド下で細針吸引生検(FNA:Fine Needle Aspiration)を実施し、細胞診検査を行いました。
FNAは細い針を用いて病変内の細胞を採取する検査であり、比較的低侵襲で実施できることが特徴です。
腹腔内腫瘤に対して開腹生検を行わずに診断へ到達できたため、患者への負担を最小限に抑えながら治療方針を決定することができました。

腹部超音波検査:赤丸で囲った場所が腫瘤
細胞診検査の結果、悪性リンパ腫と診断しました。
悪性リンパ腫は犬で比較的よくみられる腫瘍の一つであり、リンパ球という免疫細胞が腫瘍化する病気です。体表リンパ節が腫大するタイプだけでなく、本症例のように腹腔内臓器や腹部リンパ節を中心に発生することもあります。

細胞診検査:リンパ芽球様の円形細胞を主体としており、低分化型相当の悪性リンパ腫と診断
悪性リンパ腫は全身性疾患として扱われることが多く、治療の中心は抗がん剤治療(化学療法)となります。
まずは病変の広がりや全身状態を評価し、病期(ステージ)を把握した上で治療方針を決定することとしました。
また、食欲不振や活動性低下などの症状改善を目的とした支持療法も並行して実施しました。
診断結果について飼い主様へ説明を行い、今後の治療選択肢や予後についてご相談しました。
現在は全身状態や病期を考慮しながら治療計画を進めています。
今回の症例で特に重要であった点は、「炎症反応が高い」という血液検査結果だけで判断せず、その原因を画像診断によって追究したことです。
白血球数増加やCRP上昇は感染症、免疫介在性疾患、組織障害、腫瘍性疾患などさまざまな原因で認められます。そのため、血液検査のみで診断を確定することはできません。
本症例では、治療に反応しない炎症反応の持続という臨床経過から、腹部超音波検査による追加評価を実施しました。その結果、腹腔内腫瘤を発見し、細胞診によって悪性リンパ腫の診断へ到達することができました。
悪性リンパ腫は早期診断によって治療選択肢が広がる可能性があります。元気消失や食欲不振が続く場合や、血液検査で炎症反応が改善しない場合には、超音波検査などの画像診断が重要な役割を果たします。
横浜旭どうぶつ医療センターでは、かかりつけ病院での検査結果も十分に活用しながら、必要な追加検査を段階的に組み合わせて診断精度の向上に努めています。
よくあるご質問【FAQ】
Q1. 犬の悪性リンパ腫ではどのような症状がみられますか?
元気消失、食欲不振、体重減少、発熱などがみられることがあります。発生部位によって症状は異なり、初期には目立った異常がない場合もあります。
Q2. CRPが高いと必ず感染症ですか?
いいえ。CRPは炎症の指標であり、感染症だけでなく免疫介在性疾患や腫瘍などでも上昇することがあります。原因を調べるために追加検査が必要になる場合があります。
Q3. FNA(細針吸引生検)とはどのような検査ですか?
細い針を病変に刺して細胞を採取し、顕微鏡で評価する検査です。比較的体への負担が少なく、腫瘍診断に役立つことがあります。
Q4. 腹部エコー検査では何がわかりますか?
肝臓、脾臓、腎臓、消化管、リンパ節などの状態を観察できます。血液検査だけでは分からない腫瘤や臓器の異常が見つかることがあります。
Q5. 元気や食欲の低下が続く場合はどうすればよいですか?
一時的な体調不良のこともありますが、腫瘍や内臓疾患が隠れている場合もあります。症状が続く場合や改善しない場合には、早めの動物病院受診をおすすめします。