3歳のデグーに見つかった糖尿病―「白内障」と「多飲多尿」を手がかりに診断した一例

■はじめに

デグーは南米原産の小型げっ歯類で、草食性の動物です。飼育のしやすさや愛嬌のある表情が特徴で、近年ペットとして人気が高まっています。

デグーは糖の代謝が犬猫とは異なる特徴があり、糖質を多く含む食事やおやつの継続的な摂取が、健康上の大きな問題につながる事が知られています。そして、高血糖が長期間続くことで、白内障などの合併症が認められることもあります。

今回の症例では、食欲がない、元気がないという一見するとよくある症状で来院されました。しかし、身体検査と問診から糖代謝異常を疑い、尿検査を行うことで診断につながる重要な手がかりを得ることができました。

■来院経緯

3歳になるデグーが、食欲不振と元気の低下を心配され、横浜旭どうぶつ医療センターを受診しました。

デグーは食欲不振が続くと短期間でも体調が急激に悪化する可能性があるため、まず全身状態を確認しました。

身体検査を行ったところ、被毛や皮膚の状態から軽度の脱水が疑われました。さらに、両眼に白内障が認められました。

3歳という年齢を考えると、両眼に明らかな白内障がみられたことは今回の診療で注目すべき所見でした。

そこで、目の異常だけを独立した問題として考えるのではなく、全身性の代謝異常が背景に存在している可能性について検討しました。

写真:両目の中央部(水晶体)の白濁が観察される

■検査所見・診断

追加で詳しく問診を行ったところ、以前と比べて水を飲み、尿の量も増えているという情報が飼い主様から得られました。

多飲多尿は、腎疾患などさまざまな原因で起こりますが、糖尿病などによる高血糖でもみられる代表的な症状です。

そこで院内で排尿するまで待ち、尿検査を実施したところ、尿中にブドウ糖(尿糖)とケトン体が検出されました。

写真:尿生化学検査。赤丸は尿ケトン体を、青丸は尿糖の検出を示す

尿中にブドウ糖が認められることは、血糖値が腎臓での再吸収能力を超えている可能性を示す重要な所見です。また、ケトン体が認められたことから、単純な糖代謝だけではなく、エネルギー代謝全体にも変化が生じている可能性を考慮する必要がありました。

検査結果と臨床症状から、糖代謝異常、特に糖尿病を強く疑う状況と判断しました。できれば血糖値の測定も確認したかったのですが、全身の状態から採血は困難であったため無理をさせず見送ることにしました。

また、若齢のデグーで白内障が認められた場合には、糖尿病を含めた糖代謝異常に伴う全身性疾患を鑑別に加えることが重要です。

今回の検査では、よくある食欲不振という主訴だけを注目するのではなく、若齢での白内障→多飲多尿→尿糖・ケトン尿という複数の情報を組み合わせて段階的に診療をすすめたことがポイントになります。

■治療方針

デグーの糖尿病では、治療を考える際に食餌内容、体重、血糖状態、合併症などを総合的に評価し治療を行うことが必要です。

特にデグーでは食餌内容の影響を受けやすいため、糖質を過剰に摂取していないかを確認し、適切な牧草を中心とした食生活へ見直すことが重要です。

市販フードには製品によって糖質を多く含むものがあり、また果物などの甘味の強い食品を頻繁に与えることも、糖代謝に負担をかける可能性があります。

また、体重が増えすぎている場合には適正体重を維持することも重要ですが、すでに食欲が低下している個体では、単純に食事量を減らすのではなく、十分な栄養摂取を確保しながら管理する必要があります。

治療方針は個体の状態によって異なるため、全身状態を確認しながら調整します。

■考察

デグーは、犬や猫に比べインスリンの分泌や働きが低いといった糖代謝について独特の特徴を持つ動物です。飼育下では、野生下と比較して高エネルギー・高糖質になりやすい食餌を摂取する機会があり、食餌管理は健康維持において非常に重要となります。

糖尿病では、高血糖によって血液中のブドウ糖が増加すると、腎臓で再吸収しきれなくなったブドウ糖が尿中へ排泄されます。尿糖が増えることで尿量が増え、それに伴って多飲多尿が起こります。

今回、飼い主様から得られた水をよく飲む、尿が多いという情報は、身体検査だけでは得られなかった重要な情報でした。

また、今回特に注目すべきなのが3歳という比較的若い年齢で両眼の白内障が確認されたことです。デグーにおいても白内障は糖尿病との関連が指摘されており、若齢で白内障を認めた場合には、糖代謝異常を念頭に置いて全身状態を評価する価値があります。

さらに尿中ケトン体が検出された点にも注意が必要です。ケトン体は、体内で糖を十分に利用できない状況などで脂肪がエネルギー源として利用される際に増加します。したがって、糖尿病が疑われる個体でケトン尿を認めた場合には、食欲不振や脱水の程度を含め、全身状態を慎重に評価する必要があります。

デグーの糖尿病はコントロールが難しく、犬や猫の糖尿病と同じ治療をそのまま当てはめるのではなく、食餌、体重、尿糖状態、合併症を総合的に管理することが重要になります。

そしてなにより、飼い主様が普段との様子の違いに気づくことが、早期診断につながる可能性があります。デグーは体調不良を隠すことも多く、食欲不振が明らかになった時点ですでに何らかの病気が進行している場合があります。日常の飲水量や尿量、食事内容、体重の変化を普段から把握しておくことが、健康管理の第一歩になります。

■よくある質問【FAQ】

Q1. デグーも糖尿病になりますか?

はい。デグーは糖代謝に特徴があり、食餌内容によっては高血糖や糖尿病につながる可能性があります。

Q2. デグーの糖尿病ではどんな症状が出ますか?

多飲、多尿、体重減少、食欲低下、元気消失などがみられることがあります。また、糖尿病に関連して白内障が認められる場合もあります。

Q3. デグーの白内障は糖尿病と関係がありますか?

デグーでは糖代謝異常に伴って白内障が生じることがあります。特に若いデグーで両眼の白内障が認められた場合には、糖尿病などの全身性疾患についても確認することが重要です。

Q4. デグーの糖尿病は食事で予防できますか?

糖尿病を完全に予防できるとは限りませんが、デグー本来の食性に配慮し、チモシーを中心とした適切な食餌を与えることは重要です。糖質の多いおやつや食品を日常的に多く与えることは避けた方がよいでしょう。

Q5. デグーが水をたくさん飲むようになったら病院に行くべきですか?

多飲多尿は糖尿病だけでなく、腎疾患などでもみられます。特に体重減少、食欲低下、元気消失、白内障などを伴う場合には、早めに動物病院で検査を受けることをおすすめします。