モルモットにおけるヒゼンダニ・アカラス併発による重度掻痒性皮膚炎の一例

■はじめに

モルモットの皮膚疾患では、寄生虫、真菌、細菌、栄養状態など、さまざまな原因が関与します。特に強いかゆみや脱毛がみられる場合には、外部寄生虫の感染を考える必要があります。

今回の症例では、初回の皮膚検査で多数のヒゼンダニが確認され、治療によって一定の改善が得られました。しかし完全には改善しなかったため再検査を実施したところ、初回には確認されなかったアカラスが検出されました。

この症例は、検査で原因が見つかった場合でも、その後の治療の反応を丁寧に評価し、改善が不十分であれば診断を見直すことの重要性を示す症例です。

■来院経緯

1歳齢の雄のモルモットが、全身の強いかゆみを主訴に来院しました。

特に顔周囲を強く気にしており、飼い主様からも頻繁にかく様子がみられるとのことでした。

写真:顔を中心とする強いかゆみを呈していた。

身体検査では、顔全体に広がるフケと脱毛が確認され、皮膚には明らかな炎症が認められました。単純な乾燥や軽度の皮膚炎では説明しにくい重度の皮膚病変であったため、寄生虫などの感染性疾患を含めて原因を調べることにしました。

■検査所見

まず皮膚掻把検査を実施しました。

皮膚を採取して顕微鏡で観察したところ、多数のヒゼンダニが確認されました。ヒゼンダニは皮膚内に入り込んで生活するダニで、強いかゆみや皮膚炎を引き起こすことがあります。

写真:検出されたヒゼンダニ。多数寄生していた。

一方、同時に実施した真菌培養検査は陰性でした。

この結果から、今回の重度の掻痒と皮膚炎にはヒゼンダニの寄生が関与している可能性が高いと判断し、駆虫治療を開始しました。

■診断

初回検査では、ヒゼンダニによる寄生虫性皮膚炎と判断しました。

治療開始後には皮膚の状態に改善傾向がみられましたが、時間が経過しても完全な改善には至りませんでした。

写真:ヒゼンダニ治療後の様子。まだかゆみと皮膚の症状が残っている。

治療に対する反応が不十分である場合には、治療薬の効果、投薬状況、再感染の可能性だけでなく、別の疾患や複数の原因が同時に存在していないかを再評価します。

■治療方針

ヒゼンダニに対する駆虫治療を継続しながら、再度皮膚掻把検査を行うことにしました。

再検査では、初回に多数確認されたヒゼンダニは検出されませんでした。一方で、別の種類のダニであるアカラスが確認されました。

写真:検出されたアカラス。

この結果から、初回に確認されたヒゼンダニは治療によって十分に駆除できていたものの、別の寄生虫であるアカラスが皮膚症状に関与していた可能性が考えられました。

■治療内容

再検査の結果をもとに、アカラスに対する駆虫治療を開始しました。

治療開始後は皮膚の炎症やかゆみが徐々に改善し、脱毛していた部分にも回復がみられました。

治療開始から4週目の再診では、顔周囲を含めて皮膚の状態は大きく改善し、目立っていたフケや炎症も消失しました。

写真:治療後はかゆみやフケもなくなり、状態は改善した。

■考察

モルモットの皮膚疾患では、見た目が似ていても原因が異なる場合があります。特に外部寄生虫による皮膚炎では、ヒゼンダニなどの寄生虫だけでなく、アカラスなど別のダニが関与する可能性もあります。

今回の症例では、初回の検査で多数のヒゼンダニが確認されたにもかかわらず、治療後も症状が完全には改善せず、再度検査をやり直したことが大切なポイントになります。

再検査ではヒゼンダニが確認されなかった一方で、アカラスが検出されました。このことから、皮膚症状が一つの原因だけではなく、複数の寄生虫が関与していた可能性が考えられます。

また、皮膚掻把検査は、その時点で皮膚に存在する寄生虫を直接確認する検査です。そのため、寄生数や採取部位などによって検出結果が変化する場合があります。検査結果だけでなく、実際の皮膚症状や治療後の変化を合わせて判断することが重要です。

モルモットに強いかゆみ、脱毛、フケ、皮膚の赤みなどがみられる場合には、原因を確認するための検査を行うことが大切です。横浜旭どうぶつ医療センターでは、治療により症状が十分に改善しない場合に、もう一度原因の追究から実施し、なぜ改善がなかったのか詳しく調べて治療を実施しています。

■よくある質問【FAQ】

Q1. モルモットがとてもかゆがっています。どんな病気が考えられますか?

ダニなどの外部寄生虫、真菌、細菌など、さまざまな原因が考えられます。見た目だけでは区別できないため、必要に応じて皮膚検査を行います。

Q2. ヒゼンダニとアカラスは同じダニですか?

どちらもダニの仲間ですが、種類や生活する場所などが異なります。そのため、検査で種類を確認し、それぞれに適した治療を行う必要があります。

Q3. ヒゼンダニを治療したのに、かゆみが治らないのはなぜですか?

寄生虫が十分に駆除されていない場合のほか、別の寄生虫や皮膚疾患が同時に存在している可能性があります。治療しても改善が不十分な場合は、再検査が必要になることがあります。

Q4. モルモットのダニは顕微鏡で分かりますか?

皮膚を採取して顕微鏡で観察することで、ダニを直接確認できる場合があります。今回の症例でも、皮膚掻把検査によってヒゼンダニとアカラスを確認しました。

Q5. モルモットの脱毛は自然に治りますか?

原因によって異なります。寄生虫などが原因の場合は、原因を取り除くことで毛が再び生えてくることがあります。強いかゆみや脱毛が続く場合は、早めに動物病院で原因を調べることをおすすめします。