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1歳5ヵ月齢のシーズーが、長期間改善しない涙やけを主訴に横浜旭どうぶつ医療センターを受診しました。
飼い主様によると、これまで複数の治療を受けてきたものの十分な改善がみられず、徐々に涙やけの範囲が広がってきたとのことでした。
来院時には顔の約8割に涙やけによる著しい変色が認められ、一部では皮膚の赤みや炎症、においも生じていました。
また、既往歴としてアレルギー性皮膚炎があり、以前から全身の皮膚トラブルを繰り返していたとのことでした。

左:治療前、右:治療後
まず一般身体検査および眼科検査を実施しました。
涙液量を評価する検査では、正常値を超える涙液産生が認められました。これは涙が過剰に存在している状態であり、涙やけの一因となる可能性があります。
続いてフルオレセイン染色試験を実施しました。通常、この検査では眼表面に投与した染色液が鼻涙管を通過し、一定時間後に鼻腔内へ到達することが確認できます。
しかし本症例では染色液の鼻腔への到達が確認できず、鼻涙管閉塞または鼻涙管の通過障害が疑われました。
一方で、角膜潰瘍などを示唆する異常所見は認められず、その他の眼科検査でも明らかな異常は確認されませんでした。
本症例では、
・流涙量の増加
・鼻涙管閉塞の疑い
・既往のアレルギー性皮膚炎
が複合的に関与した涙やけと判断しました。
涙やけは単一の原因によって起こるとは限らず、眼疾患、鼻涙管異常、アレルギー疾患、皮膚感染など複数の要因が重なって発生することがあります。
本症例では、単純に涙やけだけを治療するのではなく、背景にある原因へアプローチすることを重視しました。
特に既往歴としてアレルギー性皮膚炎が存在していたことから、皮膚や粘膜に発生した炎症が涙液分泌や目の周囲の皮膚環境へ影響している可能性を考慮しました。
また、涙やけによって慢性的に湿潤した皮膚では細菌の増殖が起こりやすく、においや炎症を悪化させることがあります。
そのため、アレルギー管理と皮膚感染のコントロールを中心に治療を進める方針としました。
アレルギー性皮膚炎に対する治療を実施するとともに、二次的な細菌感染を考慮して抗生剤の内服治療を行いました。
あわせて涙やけによる皮膚の清潔維持についても指導を行い、自宅でのスキンケアを継続していただきました。
治療開始後、顔面の皮膚炎は徐々に改善し、赤みや不快なにおいも軽減しました。
さらに涙やけによる変色も改善傾向を示し、見た目にも明らかな変化が認められました。
現在も継続的な経過観察を行っていますが、生活の質は大きく改善しています。
今回の症例で特に重要だったのは、「涙やけ=美容上の問題」と考えず、その背景にある原因を詳細に評価したことです。
実際に本症例では涙液量の増加に加え、鼻涙管閉塞が疑われる所見が認められました。さらにアレルギー性皮膚炎という既往歴も存在しており、複数の要因が関与していた可能性が高いと考えられました。
涙やけの診療では、「涙が多いのか」「涙の排出が悪いのか」「皮膚炎が併発していないか」を区別することが重要です。
また、涙やけが長期間続くと皮膚の湿潤環境が慢性化し、細菌や酵母菌の増殖によって皮膚炎や悪臭が生じることがあります。その結果、さらに涙やけが悪化する悪循環に陥る場合もあります。
本症例では原因を一つに決めつけず、多角的な視点から評価したことで改善につなげることができました。
涙やけは犬種によって起こりやすい傾向がありますが、「体質だから仕方ない」と考える前に原因を調べることが重要です。横浜旭どうぶつ医療センターでは、眼科検査や皮膚評価を組み合わせながら、涙やけの背景にある原因の追究に努めています。
Q1. 犬の涙やけは放置しても大丈夫ですか?
涙やけ自体が命に関わることは少ないですが、放置することで目の周りの皮膚炎が慢性化し、かゆみなどから生活の質を低下させてしまう場合があります。長期間続く場合は検査をおすすめします。
Q2. 涙やけはなぜ起こるのですか?
涙の量が多い場合や、涙の排出経路である鼻涙管が狭くなったり詰まったりすることで起こることがあります。また、アレルギーや目の疾患が関与する場合もあります。
Q3. 涙やけと鼻涙管閉塞には関係がありますか?
あります。涙が正常に鼻へ流れないと目の周囲へあふれ出し、慢性的な涙やけの原因になることがあります。
Q4. 涙やけで皮膚が赤くなるのはなぜですか?
常に涙で濡れた状態になることで皮膚のバリア機能が低下し、細菌や酵母菌が増殖して皮膚炎を起こすことがあります。
Q5. 涙やけは治りますか?
原因によって異なります。アレルギーや鼻涙管の異常、眼疾患など背景にある原因を適切に治療することで改善が期待できる場合があります。