2歳の猫に発生した大腿骨頭の成長板骨折|CT検査による確定診断と外科治療

■はじめに

猫が突然、後ろ足をかばうように歩いたり、足を触ると痛がったりする場合、骨折や関節の異常が原因となっていることがあります。明らかな転落や事故を目撃していなくても、画像検査によって骨や関節の病変が見つかる場合があります。

今回は、右後肢の跛行を主訴に来院した2歳のブリティッシュショートヘアーに対し、X線検査とCT検査で大腿骨頭の成長板に沿った骨折と転位を確認し、外科治療を行った症例を紹介します。

■来院経緯

帰宅後に右後肢を跛行していることに気づき、患部を触ると痛がるとのことで来院されました。発症時は自宅に人がおらず、転落や衝突など、骨折につながる出来事がいつあったかは分かりませんでした。

身体検査では右股関節に疼痛が認められました。痛みの場所から股関節周辺の骨や関節に異常がある可能性を考え、X線検査を実施しました。

■検査所見

X線検査では、右大腿骨頭の位置に異常が認められました。大腿骨頭は骨盤側のくぼみと組み合わさって股関節を形成しており、この部位の骨折や脱臼は、痛みや歩行障害につながります。

写真:股関節のレントゲン写真。赤丸の位置にずれが確認できる。

ただし、X線検査だけでは骨折の走行や範囲を十分に把握できない場合があります。そこで、病変の詳細を確認し、手術方法を検討するためCT検査を追加しました。

写真:左の赤丸:成長板に沿った骨折が確認できる。右の赤丸:正常な成長板の大腿骨頭

CT検査では、右大腿骨頭が成長板に沿って分離し、位置がずれていることが確認されました。成長板は骨の成長に関わる部位で、骨頭と大腿骨の残りの部分との境界にあたります。また、同時に実施した血液検査や胸部X線検査、腹部超音波検査などでは、全身状態に関わる大きな異常は認められませんでした。

■診断

以上の検査結果から、右大腿骨頭の成長板を含む骨折および転位と診断しました。

■治療方針

大腿骨頭の成長板骨折では、骨折の状態や発症からの経過、骨の変化などを踏まえて、骨頭を元の位置に戻して固定する方法や、大腿骨頭・頸部を切除する方法などを検討します。

今回の症例では、CT検査で確認した骨折の仕方と転位の状態を踏まえ、大腿骨頭・頸部を切除する外科手術を実施する方針としました。

■手術内容

右大腿骨頭・頸部切除術を実施しました。手術では骨折線を直接確認し、股関節の動きを妨げる骨頸部が残らないように切除しました。

写真:手術中の写真。赤矢印の部分に骨折端が確認できた。

この手術では、骨折した部分を元の形に固定するのではなく、大腿骨頭・頸部を切除することで、痛みの原因となる骨同士の接触を避け、周囲の筋肉や軟部組織によって歩行機能を回復させることを目指しました。

写真:手術後のX線写真。赤丸部分が切除したところ。しっかり頸部から切除できていることを確認した。

写真:切除した骨頭と頸部。骨頭は成長板を含むように骨折していた。

■経過

手術後は数日間入院し、患部の状態が安定したことを確認して退院しました。術後1か月の時点ではしっかりと歩けるようになり、さらに2か月後には、ジャンプや走る動作も普段どおりにできるまで回復しました。

■考察

猫の大腿骨頭の成長板骨折では、骨折の状態によって治療方法を選択する必要があります。骨折した骨頭を元の位置に戻して固定する方法は、骨の状態などの条件が合えば選択肢となります。一方、骨折の慢性化や骨の吸収などにより、固定しても十分な安定性が得られないと考えられる場合には、大腿骨頭・頸部切除術が検討されます[1,2]。

猫19頭・21骨折を対象とした研究では、成長板骨折をピンで固定した症例のうち、15頭が術後1か月の診察で跛行を認めませんでした。一方で、骨融解の見られた症例ではインプラントの破綻などの合併症も報告されており、骨折の状態を踏まえた術式選択が重要です[1]。また、大腿骨頭・頸部切除術は股関節本来の構造を残さずに機能回復を目指す方法であり、術後の歩行機能には個体差があります[2]。

今回の症例では、骨折がいつ発生したのか明らかではありませんでした。そのため、身体検査、X線検査、CT検査を順に行い、骨折の状態を明確にしてから手術へ進めました。また、診断から治療まで一貫して迅速に進めることができたため、早期の歩行機能の回復につなげることができました。

横浜旭どうぶつ医療センターでは、跛行や関節痛の原因を詳細に評価し、必要に応じてCT検査などを活用しながら、病変に合わせた治療を検討しています。突然足を痛がる、歩き方がおかしいなどの症状が見られた際はご相談ください。

■参考文献

  1. Langley-Hobbs SJ, et al. Stabilisation of femoral capital physeal fractures using transcervical pinning in cats: 19 cases (2014–2022). Vet Rec. 2024.
  2. American College of Veterinary Surgeons. Femoral Capital Physeal Fractures. ACVS.

■よくある質問【FAQ】

Q1. 猫が突然、後ろ足を引きずるのはなぜですか?

骨折や脱臼、関節の炎症、筋肉や靱帯の損傷など、さまざまな原因が考えられます。見た目だけでは原因を判断できないため、痛みが続く場合は動物病院で診察を受けましょう。

Q2. 転落を目撃していなくても、猫が骨折することはありますか?

あります。発症の瞬間を確認できなくても、骨折や成長板の異常が見つかる場合があります。原因を決めつけず、身体検査や画像検査で確認することが大切です。

Q3. 猫の大腿骨頭の骨折は、X線検査だけで診断できますか?

X線検査で骨折が確認できる場合もありますが、骨折の範囲や位置関係を詳しく調べるためにCT検査が必要となることがあります。検査方法は症状や画像所見に応じて選択します。

Q4. 猫の大腿骨頭骨折は、手術が必要ですか?

骨折の位置やずれ、発症からの経過などによって治療方法が異なります。骨を固定する方法や、大腿骨頭・頸部を切除する方法などがあり、個々の状態に応じて判断します。

Q5. 猫は大腿骨頭・頸部切除術のあと、普通に歩いたりジャンプしたりできますか?

術後の回復には個体差がありますが、周囲の筋肉や軟部組織によって歩行機能が回復し、日常生活に復帰できる猫もいます。今回の症例では、術後3か月でジャンプや走る動作も普段どおりに戻りました。運動の再開時期は、担当獣医師の指示に従ってください。